​プロジェクト「ナラの樹」はいったんおやすみ

ソーシャルメディアは現代における「鏡」だ。

という文章を最近読んだ本で目にしました。私たちは毎朝鏡の前に立って、自分の身だしなみ、つまりは、世の中から自分がどう見えているかを確認します。SNSが高度に発達した現代において、Facebookやツイッターのプロフィールは、自分の見た目以上の情報を世の中に発信しているので、毎日SNSのプロフィールを更新することは、毎日鏡の前に立って自分の見た目を整えることに等しいということです。女子高生が10分ごとに、手鏡を開いて自分の前髪を正す行為は、10分に一度、あるいはそれ以上の頻度で、携帯を取り出して、自分のことをつぶやいたり、周りのつぶやきに反応したり、最新の写真をアップしたりして、自分の存在感を管理して常にベストな状態を維持しておこうとする行為と同じだということです。

僕は小学校の頃から鏡を見るのが苦手な子供でした。ひどいクセ毛なので毎朝起きたら髪の毛はいつも逆立って大爆発していたのですが、髪の毛同様、性格もひねくれており、「そんなもん、気にせえへんわ。人間は見た目より中身じゃ」と、変なこだわりを持ってそのまま学校に行ってたので、学校ではいつも頭爆発してる今井で通っていました。見かねた担任の先生に「ちょっとは何とかしーや」と諭された記憶があります。

そんな僕なので、大人になった今でも、鏡を見るのは苦手だし、SNSをチェックしたり、アップデートしたりするのはもっと苦手です。

だからこそ、今年の春頃からわざわざ他人に頼んで、自分のSNSを作ってもらっていました。僕はそのチームをWEBチームと呼んで、マーケティングとブログ記事の制作、SNSの管理をお願いしていました。SNSが鏡だとすれば、ソーシャルネットワークのスタイリストさんにお願いして、整髪料を使って髪形を整えてもらって、鏡の前に強制的に立たせてもらっていた、ということかもしれません。

なぜそんなことをするようになったかは後で書きますが、まず、11月末でそのWEBチームを、(今では4人のチームとなっていたのですが)解散することにしました。

4人のWEBチームのお陰で、春から約半年間、たくさんの情報をブログやSNSを通じて発信することができました。日々自分が考えていること、業界内外の若い人に伝えたいと思うこと、自分がアメリカで学んできたこと、などなど。記事の内容は多岐にわたっていたと思います。また、それによって「励まされました!」「勉強になりました!」「もっとこういう情報を発信してください!」という周りからの応援してくれる反応が少なからずあり、それはとても有意義なことでした。

そもそも今回のプロジェクトの一番の目標は、

映像(美術)業界の労働環境の改善

でした。僕がこれをやろうと決めたのは今年の1月、LAにいた時で、ちょうど向こうのアパートを引き払って日本できちんとまた地に足をつけて活動しようと決めた時でした。

当初は、LAにあったユニオンのようなものを日本に作ろうと考えました。ですが、日本に帰ってきていろんな人と話すに連れて、なかなか難しいことがわかりました。その次に考えたのが、情報の発信でした。とにかく自分の考えや、問題意識を周りにネットで発信してみようとしました。けれど、自分はもっぱら筆無精です。最初にも書いたように、鏡に向かうのが苦手でした。これまで何度か始めてみたブログも、すべて三日坊主で終わっていましたし、Facebookやツイッターも、始めたものの年に一度も更新していませんでした。こりゃ自分で情報発信なんて始めてみても、3日と持たないなと感じました。そこで、文章を書ける人をわざわざ探し始めたのです。

5月ごろに、集まってきたメンバーと、今回のプロジェクトの目標について話し合うことから始めました。映像(美術)業界の労働環境の改善という目標のために何ができるか。まず最初に僕が考えたていた改善方法は、3つありました。

映像(美術)業界の労働環境の改善のために

  • IT化による、作業効率の向上
  • 個々のスタッフのフリーランス化
  • お金の流れの明確化と簡素化

これらの目標を自分たちの周りだけで実現するのではなく、その外側にも広めていく必要があると感じていました。次に具体的なネタとして、何を発信したらよいかの議論を重ねました。最終的に、以下の2種類の記事を発信しようと言うことになりました。

映像(美術)業界の労働環境の改善のために

  • IT化による、作業効率の向上
  • 個々のスタッフのフリーランス化
  • お金の流れの明確化と簡素化

以上を実現するために

  1. 映像美術という仕事の認知度の向上
  2. ノウハウの公開、共有

5月から記事の作成をはじめて、WEBチームのみんなであれこれ考えて話し合い、できあがっものがこのサイトに集約されています。

今回、このプロジェクトをいったんおしまいにしようと決めたにのは2つの理由があります。ひとつは、ある程度僕の満足のいく情報を発信しきれたと感じたこと。もうひとつは、もう少し違った方法を考えないと、労働環境の改善にはなかなか繋がらないと感じたことです。そしてもう一つ、これを読んでいただいている皆さんに謝らなければいけない小さな理由がありますが、それについては一番最後に。

まず一つ目の理由である、ある程度情報が発信し終わった、というのは、読んで文字のごとく。これまでいろいろな形で考えを発信してきたおかげで、自分の周りにも同じように考えを発信する人が増えたり、仕事で会った時に話題になったりと、少しの変化が見られた、という実感がわきました。また直接会った時以外にも、SNSのメッセージやメールの形で、応援の言葉をくれた方々もたくさんいました。会ったこともない同業者の人や、この仕事を目指したいと考えている若い学生さんなどからも。WEBチームがいなかったら、まったく接触できていなかったであろう方々にも、メッセージを届けることができました。また、そういった周りからの応援を聞くたびに、「伝えたいと思う人に、伝えたいと思うことが、きちんと伝わっているね」と、WEBチームで共有していました。

二つ目の理由である、最終目的になかなかつながらない、というのは、一つ目の理由と相反するかも知れませんが、ある一定の効果が見えたけど、そこから先にに進みにくい、と感じたということです。その理由は、この問題が、僕が考えていたよりも根が深い、ということがわかったからです。WEBチームには、それぞれはバックグラウンドの違う人が集まってくれていて、そこで映像業界の労働環境の話をすることは、僕自身とても勉強になることが多かったです。映像業界とは関係ない仕事環境でも、共通の問題があったりしましたし、メンバーの一人が、かつて電通で働いていたこともあり、9月に電通社員さんの自殺のニュースが話題になった時には、議論が映像業界だけでなく、広告業界、さらには日本社会全体の抱える問題にも話が発展しました。僕がアメリカで学んできたことを話した時も、結局のところ日本が抱える労働環境の問題は、文化的要因が大きい。そうなると文化は簡単に否定できるものではない。という結論に行きつくところが多かったです。そういった問題を話し合う中で、現状の方法論とはまた違ったアプローチをしないと、問題解決に近づかないと感じたのです。

以上の2つの理由で、今回のプロジェクトはいったんお休みして、また少し違ったアプローチを考える必要がある。という結論に至りました。ただ、これまで応援してくれていたたくさんのフォロワーさんや、せっかく記事の溜まったHPもありますので、WEBチームがいない中でも、自分でできるペースで、発信は続けていこうと考えています。発信し続けることは大事だと感じますし、今後も今までと同じペースで、ゆっくりではあるかもしれませんが、最終目的に近づいていけるとも考えています。また、プロジェクトは11月末までなのでまだ少し活動しますし、記事にはストックがあるので、しばらくは今のペースの更新が続く予定です。

「また別のアプローチを考える」というのが今の状態で、こうしたら良い、という解決策が見つかっているわけではありません。WEBチームと話していても、「結論は出ないね」と言いながら話が終わることも最近は多々ありました。これからももっともっと、考えていかないといけない問題だと感じています。

最後に、もう一つ理由があると先に書きましたが、SNS経由で知り合えた方々に、申し訳ないなと言う気持ちがありました。このブログで読める記事は、元は僕の言葉ではありますが、別の人が書いたものです(今回のこの記事を除く。でもこれ以外で今井オリジナルそのままは、ひとつもありません!)。FacebookやTwitterの投稿も、プライベートメッセージも、僕が書いたものではありませんでした。なので、それを本当に今井だと思ってコミュニケーションとっていただいていた方々には、この場で謝りたいと思います。すみませんでした。Facebookのメッセージ経由で仕事の連絡とかしていただいた方々には、僕の反応が遅くてご迷惑をかけましたし(「今井さん、メッセージ来てますよ」とマーケティングチームから連絡を受けて初めて見ていたので)、誰かと直接やり取りしていた時に、向こうからの質問に対して僕とマーケティングチームとで、2つの違った返事をしてしまった「事故」もありました。

僕自身は、WEBチームなしにはきちんとした文章も書けないし、的確な情報発信ができるわけでもありません。マメにSNSのチェックもしないし、格好の良い投稿をすることもないと思います。鏡の前に立たせてくれるスタイリストさんなしでは、今井の頭はボサボサのままですよ。