ペットクルー ~運命的なビジネス~

 

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「わんちゃん用のセットを作るということは初めての経験で、最初、戸惑いが大きかったです」

ペット専用の撮影スタジオ、ペットクルーについてのインタビューを始めると、今井はこう切り出した。

「ペットクルーのオーナーである清水健介とは、それ以前からプライベートで交流があって。フォトグラファーでもあり、バーのオーナーをしていた健介が、新しいビジネスを始めようと考えていたときに、『ペット専用の撮影スタジオを作ろう』と思い付いたようです。ペットクルーがオープンするまでは、国内にはそういったものがほとんどありませんでした」

また、清水からのオファーの理由を今井はこう解説してくれた。

「健介が新しいビジネスを立ち上げようと決意したのは、デザインができて、図面も引けて、実際に自分で造形もできた僕と友達だったから、というのも大きな理由だったのではないだろうかと思います」

 

時計の針を少し巻き戻そう。

2015年5月のペットクルーのオープンに先立って、LAで撮影を行い、反応を確かめるため、今井は清水と共に渡米した。

「ここでも、現地に土地勘があって、コネクションもある僕の存在が大きかったようです。LAでは、わんちゃんを散歩させている、道行く人たちに『撮影用のセットがあるから写真をとらないか』と声をかけて、無料で撮影していました」

 

帰国後、ペットクルーオープンに向けてプロジェクトが動き出す。

「LAと日本で、テイストは少し変えようと最初から考えていました。日本では小型犬が主流なのに対し、アメリカでは大型犬が多いだとか、日本ではメルヘンな絵本の中の世界のようなコンセプトだったけれど、アメリカではもう少し明るくPOPな色使いで、カリフォルニアな感じが出るようにしていたためです。

何よりも難しかったのは、わんちゃんのサイズ感。人間のセットを組むのであれば、規格もありますし、これだけいろいろな経験をしているので、感覚がじゅうぶんにわかります。でもわんちゃん用のセットのデザインや、実際に造形した経験はなかった。言い換えると、『自分の中で物差しがなかった』とも言えるでしょうね。

最初は、僕が図面を引いて、実際の造形は助手に任せようとしました。ただ、デザインはできても図面が引けませんでした。図面を引くにあたって、『ここが何ミリで、だからここは何ミリで』というような数字がどれもしっくり来なかったんです」

 

ここからしばし、今井は壁にぶつかる。

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「一度、違和感を覚えてしまうと、筆が進まなくなってしまって。あれだけ筆が進まないのはどれくらいぶりだろうというほどでした。試行錯誤する中で、図面を第三者に引いてもらったこともあったくらいです。結局その問題は、デザインから造形まで自分が全部する、ということで解決しました」

 

2015年5月のオープンから1年半が経ち、新たにセットを作ったことに関して質問すると、今井はこう答えてくれた。

「一年半で蓄えたノウハウを元に、『こういうのはアリ、こういうのはナシ』といった具合に、すんなりとアイデアは出ました」

続けて今井はこう語る。

「制作についてはオープン時の経験があったため、戸惑いはなかったのですが、今回は9個のセットを作ったので、作業量が膨大でしたね。自分で造形するのは久しぶりで、楽しんでやれました。根本はやはり、僕は造形が好きなので」

 

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ペットクルーでの仕事を総括するとどういうことでしょうか、という筆者の問いかけに対する今井の言葉をご紹介して、記事を締めくくろう。

「ペットクルーは『運命的なビジネス』だったように思います。最初の方でも言ったけれど、オーナーの健介と僕が友人だったこと。デザインから造形まで僕がワンストップで仕上げられることが重要だった。『デザインはこの人に、造形はこの人に』というような流れだったとしたら、複数の人が関わることになり、収益がなくなってしまう。要はビジネスモデルとして成り立たなくなってしまうんですね」

自分が全てこなせるようになった原点について、昔を懐かしむように今井はこう続ける。

「『運命的な』、と言えばもう一つあります。僕の場合、もともと『自分でなんでもやる派』の素養は持っていました。そんな僕が高橋カイさんと出会い、素養を形にできたのだと。(関連記事『恵まれた出会い、ご縁~僕の履歴書4』)カイさんが『自分でなんでもやる派』でしたから。現場で大道具さんにダメ出しして、結局その場で、自分で造形していくカイさんの姿を傍で見ながら、僕も一緒にその作業を手伝う中でスキルが培われましたね」

 

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