想いは、言わなければ伝わらない

東京で初めて入ったWebドラマの撮影でのこと。この作品では、主人公の母親は体が弱く病気がちであるという設定でした。そこで家の中が雑然としている様子を出そうと、僕がセットのリビングルームに洗濯物の残りを無造作に置いておいたところ、カメラマンが「そこの洗濯物、汚いからわらって(片づけて)」と指示。助手の方に片づけられてしまいました。

僕は当時23歳。カメラマンは50歳を超えているだろうベテラン。僕はモニター前で、その様子をただ眺めることしかできずにいました。

すると、監督が僕の傍に来てこう言いました。

「今井くん、君の想いは分っているよ。お母さんが病気がちで、洗濯物を畳んでいる暇なんてないんだ。だけど、そのことをハッキリと言って戦わないと、画には残らないんだよ。」

とても励まされる言葉でした。監督は萎縮している僕の気持ちを理解した上で、今すべきことを説き、背中を押してくれたのです。それから勇気を出して先のカメラマンに伝えると、彼はしっかりと耳を傾けてくれました。

良い画を撮るためには主張しなければならない時がある。現場にいる以上は新人もベテランも関係ない。監督の言葉は、そのことを僕に気付かせてくれました。


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