ユニクロ『LifeWear』グローバルブランディングキャンペーン/ブランド篇・ジーンズ篇

ユニクロ初となる『LifeWear』のグローバルブランディングキャンペーンTVCMに、今井伴也が日本側アートディレクターとして参加しました。ブランド篇のテーマの下、5つの商品CMを制作。今回はブランド篇・ジーンズ篇の制作エピソードについて、聞きました。


―ブランド篇―

今回の作品における美術コンセプトは?

「制作したのは6本で、すべて“人はなぜ服を着るのか?”という問いかけに沿い、人々のごくごく普通の生活を映し出している。毎日見る風景は一見なんの変哲もないようだが、実はすべての人達には多かれ少なかれ物語がある。そうした日常の一部を切り取った作品だから目に見えて派手なことはないが、何気ない美しさを表現する必要があった。いたってシンプルだからこそ、それを崩さず、だけど印象に留まることを目指した。」

川口篇では、中心となるカップルの他にもたくさんの人が登場しますね。人々の物語はどのように描かれているのでしょうか?

「例えば0:08あたりの老夫婦。いつもは仲睦まじいのにちょっと喧嘩をしたようで、そっぽを向いている。0:43でオレンジ色の風船の向こうにいるビジネスマンは仕事がうまくいっていなくて、携帯電話で取引先か同僚と口論しているんだ。そして中心となるカップルは、理由は分からないが何かしらすれ違いがあったのだろう。彼氏が駆け寄ると彼女は泣いているけれど、最後は彼が抱きしめるから、きっとまた二人で歩いていくんだろうね。」

一人一人の物語を想像しながら見るのも楽しいですね。今回は川口駅前でのロケ撮影でしたが、美術的なポイントは?
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「セットではないので、ロケーションを活かしつつ補う必要があった。例えば最後のシーン。広場の階段側面はもともと何もなく真っ白な壁なんだけど、何もない真っ平な状態というのは、フレームのなかで主張して悪目立ちすることがある。そこで自動販売機を2台置いた。その左側の方に植え込みを追加して、自転車置き場を作ったのも同じ理由。道行く人たちが本物の自転車置き場だと思って停めてたけど(笑)。広場にあるベンチやプランターも用意して置いたんだけど、空間に凹凸をつけ、奥行きを出して馴染ませるのはよく使う手法だね。

逆に引き算することもある。バランスを見て立て看板なども幾つか取り除いたし。0:21あたりで男性が通り過ぎる看板は元からあったものだけど、枠の色がシルバーで映像的には違和感があったから、青枠にしてポスターも付け替えたよ。」

プランターやベンチ含め、まるで最初からあったかのように違和感がありませんでした。

img_20160714_142959_720「違和感ないのが成功だからね(笑)。プランターの鉢の色に関してはデザイナーのKK Barrettが物凄くこだわって、3回くらい塗り直しを指示したの。塗装部さんにもとうとう“これ以上勘弁してください”と音をあげられて……。あの色は、KKと一緒に行った蕎麦屋で見た器の塗りがイメージにピッタリで、それを反映させたもの。」

今回、かなりの数の小道具を集めてましたよね。助手の方も色んなところに走り回って探していました。

「6本の作品全てを通して一番こだわり、一番大変だったのは小道具かもしれない。とにかく色々な可能性を考慮して、風船、自転車、イヤフォンのケーブルに至るまで、さまざまな色・形を見ながら一つ一つ選択した。実際に使っているのはそれぞれ2,3個でも、その10倍くらいの数は用意しておいたね。“日常”の設定だからこそ、目立ちすぎるのはNG。でも存在を消しすぎない、何かしら引っかかるような小道具を選定した。
0:52あたりでカップルの向こうにカメラを構えている白髪の男性がいるんだけど、実は、今年亡くなったニューヨークの写真家、ビル・カニンガムへのオマージュなの。このカメラもビルが使っていたのと同じ型を探したよ。」

そういえば、撮影直前に色んなカメラ屋さんを走り回ってましたね!なぜ彼へのオマージュを表したのでしょう?

「ビルはニューヨークの街角で、セレブリティではなく、一般の人達のファッションを撮り続けた人。このシーンは監督の意向で入れられたんだけど、普通の景色にドラマを見出すビルの姿勢と、何気ない日常を切り取るという今回のキャンペーンテーマとに通じる部分があると考えたんだと思う。カメラについてはレンズのサイズや形も細かく選んだけど、画面越しには分からないよね(笑)。細かいところでいうと、0:59で右手前に座る二人の女性のペットボトルに注目。オレンジのフタ、つまりホットのドリンクなのね。このCMは秋の設定だから、季節感を表現した。こうした些細な部分も、美術としてのこだわりポイント。」


― ジーンズ篇―


img_20160708_131216_720横に動くブランド篇とは打って変わって、ジーンズ篇では縦の映像表現でしたね。

「上から下へ、下から上への動きを表せる階段の特性に、軽やかに揺れる小道具などを用意することで、ユニクロジーンズの軽快さを表現した。」

女性が持っている植木鉢の葉の揺れや、衣装ですが女の子の黄色いチュールなど、軽やかで抜け感を出しているように見えました。

「この植木鉢も実際に助手が持ってみて、“良い揺れ具合”をチェックして選定。あと、最初と最後のカットで映っている、チェックのシャツにベージュのパンツを履いて階段を降りてくる男性。この人がイヤフォンをしているのも、揺れを表現するための小道具。」

階段の色チェックCG。今回のロケ地は流山駅前の階段ですが、美術的にポイントとなった箇所はありますか?

「階段の真ん中にある水色の部分だね。元々は茶色いウッドデッキのようなもので、その下に網目の排水溝のようなものがあった。僕たちが狙っていたカラーパレットはモノトーンでもビビッドすぎるものでもない、多少の彩りがある世界だったから、ここに何か色をつけようと。最初にPhotoshopで5色くらいの色を当てて、最終的にウッドデッキ部分を水色、網目部分をグレーにすることにした。」

 

________________720この水色の部分は置き換えているんでしょうか?

「元の形を活かせるように凄く薄い木で作った板を被せているだけ。ただ、子供が飛び跳ねるシーンの何段かは強度が必要なので、そこだけ支えを入れて頑丈にした。」

水色の色味については、デザイナーのKKと意見がぶつかったこともあったとか。

「手前4段の、水色に汚しをかける具合についてだね。KKは実物の傍まで行って指示をする人で、僕はモニターで美術を見る方なのね。仕上がった作品は皆モニターを通して見るわけだから、その見え方を意識するのと、僕がモニター前を離れてしまうと助手や業者さんの動きが止まってしまうこともあって。で、僕がトランシーバーで塗装部さんに追加の汚しを依頼していると、KKは“汚しすぎだ!クリーンなんだから、そんなに汚す必要はない”と。結果的には彼のイメージに近い方に寄せて塗りなおしたんだけど、最後まで二人で戦ったなぁ(笑)。」

クリエイター2人の、こだわりですね。水色にしたことで、全体に統一感がでて美しい画になっていますね。

「川口ロケ含め、Droga5(クリエイティブエージェンシー)のディレクターが“今回のアートは正解だ!”と美術部を褒めてくれて。大きなセットは作っていないが、色を微細に差し引きして創り上げた世界が伝わったんだなと思うと嬉しい。あ、ちなみにジーンズ篇に出てくるペットボトルのフタもオレンジ色でホットなので、探してみてね。」


さて、次回はジョガー篇・ニット篇についてのお話をお送りします。お楽しみに!

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KK Barrettとの出会い(1)
今回一緒に仕事をしたデザイナーKK Barrettについて今井が書いています。


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