KK Barrettとの出会い(1)

UNIQLOの案件では、自分はアートディレクターのポジションで、デザイナーはアメリカから来ると聞いていた。

なんと、そのデザイナーとはKK Barrett。彼は数々のCMのほか、映画に携わるプロダクションデザイナー。映画でいうと『マルコヴィッチの穴』や『ロスト・イン・トランスレーション』、『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を手掛けた。『her/世界でひとつの彼女』では、アカデミー賞の美術賞にもノミネートされている。

彼と初めて会ったのは7月7日、七夕だった。この日は僕の誕生日。サインをお願いしようと思い、LAで子供のために購入していた『Where the wild things are(邦題:かいじゅうたちのいるところ)』の絵本と、ピンクのサインペンを持って出かけた。この絵本は1963年に出版されたもので、2009年の映画化においてはKKが美術を手掛けている。サインペンをピンクにしたのは、『her/世界でひとつの彼女』を意識してのことだ。

実際に会ったKKはとても気さくで、快くサインをしてくれた。そして、さまざまな撮影のときの小話を沢山聞かせてくれた。

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『Where the wild things are』を映画化するにあたっては、原作者のモーリスが監督のスパイク・ジョーンズにこう言ったそうだ。
「自分の原作は、書いた当時の物語。だから映画では今のあなたの思うがままに描きなさい。ストーリーも大きく変えても構わないよ。でも自分が一番好きなシーンは、部屋が森に変わるところなんだけど」と。これを受けて、スパイクはモーリスが一番好きと言ったそのシーンを容赦なく変更したらしい。
また、かいじゅうたちの着ぐるみをデザインしたコンセプトアーティストが自ら着ぐるみの中に入って演技したことや、かいじゅうたちが作る鳥の巣のようなボールの製作方法なども聞かせてくれた。この鳥の巣のデザインは、庭の鉢植えの中に水撒き用のホースがしまわれている状態の写真からインスパイアされたそう。特に何の変哲もない写真だったが、デザインのインスピレーションはどこに転がっているのか分からないと彼は言った。

『ロスト・イン・トランスレーション』の撮影ではクランクインの前日に来日して準備を始めたことや、監督であるソフィアコッポラの話も聞けた。当時のスタッフには中村桃子さんが装飾の助手で参加していて、「ピーチでしょ」と、KKは名前の意味も覚えていた。今や彼女は有名なCMデザイナーであることを伝えると、とても喜んでいた。

何より面白かったのは、デザイナーあるある話。仕事をする上で感じていること、仕事の選び方、どのようにクライアントに対してアイデア通すか、どんなソフトを使うか、など。そして、僕がLAでお世話になっていた大道具さんや業者さんにも、共通の知り合いがいたことで、話は尽きなかった。

まだまだ話足りない部分はあるけど、残り3週間かけてもっと仲良くなりたいと思う。

KK Barrettとの出会い(2)はこちら


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